自然界に存在する植物や菌糸、岩の割れ目など、有機的で複雑なかたちに惹かれています。
地中で静かに広がり続ける生命の動きや、目には見えない力が作用し合うその世界を思い浮かべながら、その記憶と感覚を手の中に呼び戻すようにして、手びねりで形を起こしました。
オーストラリア国立美術学校で陶芸を学んでいた頃、アボリジニ・アートと出会ったことは制作に大きな影響を与えています。
彼らがアートを通して“世界の成り立ち”や“存在同士のつながり”を可視化してきた姿勢は、私にとって大きな示唆となりました。
形をつくる行為が、目に見えるものだけでなく、目に見えない関係や力を映しだす——その考え方は、今の制作にも深く通じています。
意識的にデザインするのではなく、指先の感覚にゆだねることで、内側からゆっくりと成長していくような造形を目指しています。
粘土を積み上げる過程で生まれる厚みやゆらぎ、わずかに残る指の跡や面のうねりは、まるで土の中で生きものが息づくような、穏やかで確かな力をそっと映し出します。
制作の中では、外と内、偶然と必然のあいだに立ち上がってくるかたちの気配に耳を澄ませています。
自分が形を“つくる”というより、素材とやり取りをしながら、そこに現れようとするものを少しずつ手助けしているような感覚です。
陶土の質感や焼成によって生まれる予期せぬ変化もまた、作品の一部として受けとめています。
そうしたプロセスを通して、普段は意識されない地中の世界に流れるリズムや生命の息づかいを、かたちとしてすくい上げたいと考えています。